【本】「トップ・レフト」黒木亮 著

  • 2018.05.22
【本】「トップ・レフト」黒木亮 著

国際金融世界の緊迫した攻防を描いたノンストップ小説

トップ・レフト ウォール街の鷲を撃て (角川文庫)
黒木 亮
角川書店
売り上げランキング: 179,213

AmazonのUnlimitedにラインナップされていて、レビュー評価平均が4を越えていたのでとりあえずダウンロードし、なにげなく読み始めた本書。

文庫本でさえ499ページという長い小説だけど、読み始めると止まらない。

金融の世界が舞台のため、一般人には馴染みがない世界なのに、登場人物たち、そして本書のメインになる大きな案件の行方がどうなるのか、気になってページをめくる手が止まらなかった。

著者は実際に銀行や国際金融プロジェクトを数々こなしてきた経験を持つため、一般にはほとんど知られない世界が緻密に描かれてる。

専門用語もばんばん出てくるけど、その都度素人にも分かるように丁寧に解説されてる。

ただ、正直、そのへんはどうでもいい。その世界で仕事をするわけでもないから、ささっと適当に流せばいい。

本書から目が離せないのは、中心人物である2人の日本人と、どでかい投資案件。

対照的な2人の日本人が織りなすドラマ

2人はもともと邦銀の同僚だったけど、1人は冷や飯を食らわされ、1人は出世街道を歩んでいるという対照的な境遇。

前者は邦銀を退職し、アメリカの投資銀行に転職する。日本国籍も捨て、イギリスの支社に赴任して、そのまま英国の国籍を取る。

一方のエリート街道氏もロンドン支店に転勤となり、たまに会場などで交錯する二人。

序盤はその2人の仕事ぶりを並行して描きながら、ゆるやかに進む。

序盤の最後の方で、本書の核となる、どでかい投資案件が出てくる。

エリート君がいる邦銀が主幹事を務めるべく、奔走するのだけど、イギリス君は邦銀への恨みという個人的な感情もあり、その案件を潰そうとする。

エリート君もキザな奴とかではなく、いたって真面目に、プロフェッショナルに、情熱を持って仕事に取り組むビジネスパーソン。各国の銀行からの信頼も厚い。

一方のイギリス君は今で言う「超肉食系」で、儲けるためならなんでもやるというタイプ。

さまざまな苦労やトラブルを乗り越えて、邦銀は投資案件をメイクする寸前まで行くのだけど、裏で画策していたイギリス君の放つ一発で急転直下の事態に。

この結末はどうなるの?と最後まで目が離せない小説だった。

緊迫した国際金融を支えるヒューマンドラマが読みどころの本書

外資の投資銀行はマネージャーやディレクタークラスになると、年収が軽く数千万〜億までいく。自分の知り合いにもいる。

もちろん、仕事は激務。「一生やる仕事じゃないよ」と、みんな口を揃えて言う。

噂には聞いていた投資銀行の激務だけど、実務として、どんなビジネスを行っているのか、世界にたくさんある銀行が連携する時、どのような交渉と条件が交換されるのか。

そしていくらぐらいの金が動くのか。

大きな案件を中心に添えつつ、彼らの実務が事細かに描かれ、非常に面白かった。

そしてエリートならではの考え方や世界観というのもあり、いちサラリーマンの自分もかなり刺激を受けた。

めちゃくちゃ乱暴に言ってしまえば、ドラマの24の金融版。あの緊迫感、そのままに。

小説で、ここまでコースタームービーのような緊迫感を出せるのかと、その筆力に脱帽です。

いやぁ、面白かった。各方面で絶賛されているデビュー作だけのことはる。ぜひ、他の作品も読んでみたいと思った。

ただ、「ちゃんと校正してる?」と思わせるほど、商用の本なのに誤字が目についた。角川ともあろう大きな書店から出版するのであれば、一文字一文字、ちゃんと校正して欲しいものです。

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