営業もエンジニアも、ざっくりでいいから財務諸表を読もう

営業もエンジニアも、ざっくりでいいから財務諸表を読もう

ビジネスパーソンなら職種に関わらず、財務諸表を読む習慣をつける

経営層は当然読んでいる財務諸表。経営層でなくても、ビジネスパーソンなら財務諸表を読む癖はつけよう。

会計や経理をするわけではないし、ましてやM&Aのデューデリをするわけでもないから、ざっくり把握する程度で十分。

この記事では、財務諸表のここだけは読んでおこうというのを紹介します。

財務諸表とは

ざっくり言ってしまうと、家計簿の会社版。ほんとにざっくりだけど。

財務諸表を見ると、その会社がどれほど資産を持っていて、負債があって、売上はどれぐらいで、利益率はどれぐらいかということが分かる。

これから営業訪問しようとしている会社や、パートナーシップを組もうとしている会社の財務諸表が手に入るなら、見ておかない手はない。

相手がどれぐらいの価格なら買ってくれそうなのかとか、協業するなら、相手の財務状況を把握しておくことで、どこまでなら投資してくれるのかというのが分かる。ざっくりだけどね。

ただ、繰り返すけど、会計士や税理士になるわけではないから、細かいことは気にしなくていい。ましてや簿記なんか取らなくていい。

一応自分はエンジニアでありながら、縁があって無料で教えてもらったおかげで、日商簿記3級は取ったけど、普通に読むだけなら簿記の資格は不要。

読むのは財務三表のうちBSとPLだけ

財務三表とは以下のものを指す。

  • 貸借対照表(BS)
  • 損益計算書(PL)
  • キャッシュフロー計算書(CF)

このうち、読んでおくのはBSとPLの2つ。それも全部読む必要はなく、一部の項目を把握しておくだけでOK。

では実際の財務諸表を見ていこう。

どこで入手するのか

企業のホームページで公開していることもあるけど、一番確実なのは金融庁が提供しているEDINETを使うこと。

財務諸表を含む、財務状況を記した書類を「有価証券報告書」と言うけど、上場している会社はこの書類の提出が義務付けられている。そしてEDINET経由で、無料で手に入るので、相手が上場企業なら必ずチェックしよう。

まず見るのは概況

さて、では実際の有価証券報告書を見ていきましょう。例にあげるのは、個人的に財務上は超優秀経営をしていると思っているサイバーエージェント

EDINETの「書類検索」で「サイバーエージェント」と入力して検索すると、直近の四半期報告書とかも出てくるけど、ここで見るのは「有価証券報告書-第20期(平成28年10月1日-平成29年9月30日)。

サイバーエージェントは期が10月から始まるので、一番新しい有価証券報告書は2017年9月末で締めたものになります。

有価証券報告書は、まずトップに企業の概況が記されています。

過去5年分の、おおまかな財務状況が記されています。

財務状況を把握するには、3年〜5年ぐらいの数字を眺めることが大事なので、ここは必ず見ておこう。単年度だけで見てもあまり意味がないから。

まず売上をチェックする。

2017年度の売上(連結)は約3,713億円。すごいっすね。

従業員数が4,416人だから、1人あたり8,400万ぐらいの売上。

次に経常(けいつね)こと経常利益。この項目がほぼ会社の利益を表すのでチェック。

2017年の経常は約287億円。

ざっくりだけど、経常÷売上が10%を越えると優秀と言われているので、サイバーエージェントの場合、少し足りない(10%を切ってる)。

「あれほどの人気企業、大企業が経常率で10%を切ってるってことは、なににお金を使っているんだろう」と疑問に思うことが大事。

そういう疑問を持って、あとのBSやPLを見ていくと「なるほど」と分かることもある。

次に見るのが「営業キャッシュフロー(CF)」と「投資キャッシュフロー(CF)」

営業CFは文字通り、本業でどれだけお金が入ってきたのかを示す数値。ここがマイナスだと営業的には赤字なので、会社としてまずい状況になる。

投資CFはどれだけ投資にお金を出したかを示すので、通常ここはマイナスになる。

ここのマイナス数値が低いまま何年も経っている場合、「この会社は投資には積極的ではない」と判断できる。

ケチと言ってもいい。あまり付き合いたくない会社というわけですな。

そして営業CF+投資CFをフリーキャッシュフロー(CF)と呼び、フリーCFがマイナスの会社は非常に危険。借金しないと運営していけなくなるから。

サイバーエージェントの場合5年連続でフリーCFはプラス。2017年度はちょっと危なかったけどね。

そして、例えば2017年を見てみると、売上が3,713億あって、投資CFが203億にもなる。売上の10%近くを投資に回していることになる。

売上や営業利益が大きくても、投資をしない会社はやがて尻窄みになる。

サイバーエージェントの場合、順調に売上を伸ばしていても、より大きくなるために積極的に投資をしている会社と判断することができる。

しかもなんでもかんでも投資してしまえ、ではなく、無理をしない範囲で(フリーCFがプラスに収まる範囲で)投資をしていることが分かる。

CMなどで派手な企業に見えるサイバーエージェントだけど、無茶をせずに、でももっと大きくなるために堅実な経営をしていることが読み取れる。

概況だけでここまで分かるんです。

一応株主構成も見ておく

必須ではないけど、興味本位で株主構成も見ておきましょう。

今やどちらかというと麻雀の方で有名な藤田社長が筆頭株主になっていて、20%超持ってる。

他は投資銀行やファンド系が数%持っているだけなので、実質藤田さんのオーナー会社であり、投資戦略上ファンドを入れてるということが分かります。

貸借対照表(BS)を見る

BSからは大したことが分からないので、2-3点見ておくだけ。

BSは「資産の部」と「負債の部」の2つに分かれてるけど、まず見るのは資産の部。

ここで見ておくのは「現金及び預金」ぐらい。あとは参考程度に「固定資産」のところかな。

サイバーエージェントの場合、現金及び預金は約466億円。非常に荒い言い方だけど、「今日売上がゼロになっても、466億円はあるよ」ということ。

仮に約4,000人の従業員に平均500万円の年収を払っているなら、4,000 x 500万 = 200億円が年間で必要になるけど、466億円あるということは、「まったく売上がなくても2年は従業員に給料が払える」ということ。

実際にそんな状況は起こりえないんだけど、よく言われるのは「売上ゼロでも半年分給料が払えるだけの現金があるといい」ということ。

一つの指標に過ぎないけど、サイバーエージェントの場合2年も払う体力があるので、相当な現預金を持っていることになる。

参考程度に固定資産を見ると、サイバーエージェントみたいにIT企業で、しかもインフラ事業ではなく、広告事業を主としている企業のわりには有形固定資産が866億円もあり、かなり比率が大きい。

実際にサイバーエージェントの本社に行ったことがなくても、「自社ビルを持ってるのかな」とか「データセンターを自前で持ってるのかな」という推測が立つ。

大事なのは、こういった数字だけの表を見ながら、自分なりに疑問や推測をしていくこと。

そうすると、サイバーエージェントの上層部と話す機会があったり、会食をする時に、「なんであんなに有形固定資産が大きいのですか?」と質問できる。

「グループ会社含めて全部自社ビルだったりするのですか?」と聞けるわけ。

すると、「いい質問ですね。実は・・・」みたいな意外な話が聞けるかもしれない。

次に負債の部を見る。ここもざっくり見であれば、見ておくのは2つだけ。

流動負債と固定負債の部に「(短期もしくは長期)借入金」及び「有利子負債」があるかどうか、あるのであればどれぐらいの金額かということ。

この2つは借金を示す。だから項目自体がない場合いわゆる無借金経営をしていることになる。

無借金経営自体が必ずしもいいというわけでもないし、借金があっても別に悪いことではない。

ただ、売上や利益に比べて借金が多いと、かなりまずい。

特に短期借入金(流動負債に記載される)は近いうちに返済しないといけない借金なので、例えば利益が1億しかないのに短期借入金が10億とかなっていると、「やばいんじゃね?今年、その10億はどうやって作るの?」と思うわけ。

現預金が10億あれば、とりあえずなんとかなるんだけど、自転車操業に近い経営をしているんだなって判断されてしまう。

サイバーエージェントの場合売上や利益に比べて借入金の金額は非常に小さいので、全然問題ないですね。

ちなみになにかと話題になるソフトバンクは売上が8兆円もあるけど、有利子負債が2.6兆もある。固定負債側の有利子負債にいたっては12兆もある(固定負債もしくは非流動負債は長期で返していくものなので、額が大きくても今すぐ問題になるわけではない)。

大規模なM&Aを繰り返してきた企業なので、「借金も大きいなぁ」ということが財務諸表を見るとよく分かる。

なお、それ(借金が大きい)が「悪い経営だ」と言っているわけではないことに注意。ソフトバンクなんかは大きな有利負債を抱えながらも、数十年かけて8兆円企業にまで拡大したわけだからね。

ただ、まぁ、普通の経営者なら借金はできるだけしたくないので、BSの負債の部分で有利子負債や借入金はできるだけ少なくしたいと思うし、見てる方も「借金に頼らない経営をしているんだなぁ」という感想を持つわけです。

損益計算書(PL)を見る

BSが会社の資産状況を示す表なら、PLは1年の営業活動を示す表。

PLの各項目がなにを意味するのかは、それこそ簿記の勉強をしているとみっちりやらされるんだけど、一般サラリーマンなら、ざっくり「売上」「営業利益」「経常利益」だけを見ておけばいいでしょう。

サイバーエージェントの2017年度を見てみると、

  • 売上:約3,713億
  • 営業利益:約307億
  • 経常利益:約287億

まぁ、優秀ですな。羨ましいです。

一人1億の売上が大企業のひとつの指標と言われてるけど、従業員が約4,000人のサイバーエージェントはそれに迫る売上を作ってる。

売上から原価や販管費(社員の給料もここに含まれる)を引いた、純粋に営業だけで儲けた金額を示す「営業利益」が307億なので、ざっくり10%ぐらいの利益率を出してる。

インフラ事業をしているわけではないので、10%の営業利益率は意外と低いなという感想だけど、サイバーエージェントはアメブロなどのITサービスを提供しているので、その分の運用コストが結構かかってるのかなと推測する。

さっきも書いたけど、そういう推測や感想を持つことが大事で、実際にそれが正しいかどうかはここではあまり問題ではない。

今回はざっくりしか見てないけど、そのへんが気になれば(なんでこんなに営業利益率が低いんだろう?とか)、他のページの説明文をじっくり読むと謎が解けることもある。時間があれば、他のページも読んでみよう。

で、一般的には営業利益≒経常利益と言われていて、サイバーエージェントの場合もほぼ同額だから、「本業以外に余計なことをしたり、突発的な事情は発生していない」ことが分かる。

例えば、本来携帯電話事業がメインなのに、調子に乗って米国の株なんかを大量に買い、大損こいたという場合営業利益>>>経常利益となり、「なにやってんだ、ここの経営陣は」と笑われてしまう。

という感じで、「概況」「BS」「PL」の、しかも一部をさらっと眺めるだけで、「(グループ会社全部で)4,000人以上も従業員がいて、売上は1人1億に迫る勢い、経常利益もしっかり残し、投資も積極的に展開している。素晴らしい経営を数年以上続けている企業」ということが分かるわけです。

企業によっては微妙にBSやPL内の言葉、表現が違うこともあるけど、そういう場合ぐぐればすぐに回答が見つかるので、分からなければすぐにぐぐろう。

最初は読むのに時間がかかるかもしれないけど、慣れてくれば今回のサイバーエージェントのように概況だけ掴む程度なら10分もあれば分かるようになります。

営業も技術も関係なく、ビジネスパーソンなら財務諸表は必ず読むべきだと自分は思っているので、今の仕事に直接関係なくても、入手できるなら(公開されているなら)、関係会社の財務諸表は読むようにしましょう。

先方の家計事情が見えてくると、それだけで楽しいしね。

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