IT技術は先人からタダで教えてもらい、タダで後輩に伝えていく

IT技術は先人からタダで教えてもらい、タダで後輩に伝えていく

ITエンジニアの気持ちは伝承される

ITはInformation Technologyというより、最近ではInternet Technologyと思っているが、いずれにせよITに関わっているエンジニアの情熱は上から下へ伝承されていくものだと思っている。

きっかけはまだ20代半ばの頃の出来事だった。

当時大阪の地域ISPでサーバやネットワークのエンジニアをしていた。転職履歴で書いた2社目の会社だ。

新卒で入ったのが携帯キャリアだったため、ネットワークやサーバ周りの知識はあまりない。特にISPのインフラで使われるようなUNIXやLinux、その上で動くApacheやニュースサーバ、メールサーバ、DNSなんて知識も経験も皆無だった。

四苦八苦しながら毎日が勉強という日々だったが、特に当時はダイヤルアップでインターネットにつなぐ時代だったので、RASやBASなどはまったく分からない。

機嫌よく動いてる時は問題ないが、トラブルが発生すると、そらもう大変なわけです。

ある日の午後、MAX4000がトラブった。

当時ダイヤルアップサーバとして、MAX4000とかMAX6000というのがあった。2-3Uの筐体にレシーバが数十枚入っていて、それで家庭からのダイヤルアップを受け、Radiusで認証して、インターネットへ接続するというサーバ。

全部死んだわけではなく、一部で調子がおかしい。一部のお客さんだけダイヤルアップ接続が受けられない。

Radiusや、ID/PWD、ログを調べても分からない。

周りからは「どう?大丈夫?」と聞かれるけど、分からない。

途方に暮れていた時、19時ぐらいだったと思うが、部長の知り合いという男性がヘルプに来てくれた。以前ちょっとだけ紹介されたことがあるけど、あまり会話したこともなく、部長が依頼したから来たよぐらいな感じだった。

夜も19時を回ってるのに、一緒にログや疑わしい箇所をひとつひとつ見ていってくれる。

最終的に21時ぐらいだったと思うけど、「あぁ、これだね」と彼が言ったのは、MAX4000に刺さっている1枚のボードが緩んでいたことだった。

「あ、それ、自分も疑わしいと思って一度抜き差ししたんですけど・・・」と言うと、

「あぁ、うん、多分ね、こうしてこうして・・・」と彼が抜き差しをする。

すると、半日以上死んでたボードがいきなり復活した。

「えぇ、なんで・・・」と驚くと、

「MAXのボードはね、固いんですよ。だから、刺さったと思った場所から、もうひと押し、「ぐいっ」と押し込んでやる必要があるんだよ」とのこと。

やってみると確かに、「刺さった」と思った場所から、もうひと押しできる。

そんな落とし穴があったのか・・・と脱力しながら、3時間近くトラシューに付き合ってくれた彼には感謝をしてもしきれない。当時先輩SEが退職した直後だったこともあって、一人でインフラを管理しており、狭いサーバルームで途方に暮れてた。地獄で仏を見た気持ちだった。

なんで手伝ってくれるのですか?

彼も無事トラシューが済んでほっとしたのか、夜も遅いのに少し雑談に付き合ってくれる。

部長の話では、彼はインターネットが日本で広がり始めた時からサービス提供している古参ISPの立ち上げメンバーだったらしい。

そんなすごい人が、いくら部長の知人とはいえ、大阪の端っこの小さなISPでのトラブルシューティングをなんで手伝ってくれるのか。お金にならないのに。

しかも、全然嫌がって手伝ってくれていたわけではない。むしろ、なんでこんなに親切に?と、こちらが恐縮するぐらい熱心に、丁寧に見て、教えてくれる。

そこで、失礼かもしれないけど、素朴に思った疑問だったので聞いてみた。

「すいません、多分お金はお支払いしていないと思うんですが、なぜ手伝ってくれるのですか?」と。

ひょっとしたら、怒られるかなと思った。優しい人だったけど、ぱった見た感じは怖い顔してるし。

そしたら彼が即答するには、

「僕らもね、もたちぃ君ぐらいの年の頃はたくさんトラブルを経験して、先輩に助けられたんだよ。あのしんどい思いは次の世代にはして欲しいと思ってないのでね」と。

かっけぇー。なんだ、この人。

てっきり「俺たちはもっと苦労してきたんだよ、お前らもこれぐらいで音を上げるな」と活を入れられるのかと思った。

そしたら、「君たちには苦労してほしくない」と来たもんだ。

そうなのか。そういうものなのか?

自分たちは苦労した。だから次の世代は苦労してほしくない。

自分にはそういう考えができるだろうか。

俺はこんなに苦労しているんだ、それに比べてお前らはどうだ?

こういう気持ちが少しでもないだろうか。

大いに反省し、インターネットに関わるエンジニアたちの心意気に触れた瞬間だった。

あれから20年

もう20年も前の話だ。

でも今でもあの時のあの人の言葉、行動が今の自分の行動規範になってる。

だから、自分はオープンソース、オープン技術が好きだ。できる限り、プロプライエタリなシステムは使わない。

自分がシステム組むなら、絶対Linuxだし、WebもDNSもメールもすべてOSSを使う。

インターネットで育ってきたエンジニアは、「情報はwebで手に入る」文化に慣れ親しんでいる。系統的に勉強するなら、オライリーあたりの本を読むのがいいが、Postfixを構築していて「ここの設定はどうするんだ?」という時、ぐぐるとすぐに似たような例が出てきて、configが公開されてる。

ここで苦労したよ、誰か同じポイントに躓いたら参考にしてくれという気持ちで公開してくれているわけだ。

それこそ20年近く前、まだRedhatが3とか4の時代(まだフリーで使えていた頃で、CentOSなんてなかった)、自分もLinuxの設定情報をwebで公開してた。

当時にしては結構アクセスがあったんだけど、これも「少しでもLinuxエンジニアの参考になれば」という気持ちからで、有名になりたいとか、ましてやマネタイズしようなんて全然思わなかった。

今20代の人は、遠慮なく先輩から教えてもらおう。

今40-50代の人は、後輩たちにどんどん伝えていこう。

インターネットの世界で仕事をしてきてよかったなと思う20年だった。

 

 

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